ちょっと硬い話なので、興味のない方は読み飛ばしてください。
『鼻濁音』ってご存知ですよね。鼻濁音は「ガ行(ギャ行も含む)」にだけあり、例えば「が」は、喉の奥から出す普通の「が」と、鼻に抜けるように出す「が」と2種類あって、後者の音を『鼻濁音』と言います。「んが」に近い音です。英語の発音記号で書くと、普通の「が」は [ ga ]、鼻濁音の「が」は [ ŋa ] でしょうか。ここではわかりやすくするために鼻濁音は赤字で書くことにします。
ちょっと気になることがあって調べたら、ガ行鼻濁音は東日本を中心に見られるものであり、中国地方や九州には無いとのことでした。また東日本でも若い人では鼻濁音を使う人が減っているとのことでした。鼻濁音を使う人が減っている理由は、現在は東北地方の一部を除き、ほとんどの地域では濁音で話しても鼻濁音で話しても意味の違いがないので、使い分ける必要がないからなのだそうです。北関東生まれで中期高齢者の私は自然に使い分けています。
普通の濁音と鼻濁音の使い分けは原則があります。
① 語頭の音は鼻音化しない
「学問(がくもん)」
② 助詞(格助詞・接続助詞)は鼻音化する
「わたしがやりました」
③ 数詞の「5」は鼻音化しない
「25(にじゅうご)」
但し、人名や名詞の場合は鼻音化する
「七五三(しちごさん)」
④ 語間は鼻音化する
「小学校(しょうがっこう)」
但し「生ごみ」のように「生」の「ごみ」というような複合語は鼻音化しない。
⑤ 連濁の場合は鼻音化する
「赤組(あかぐみ)」
連濁とは2つの言葉が組み合わされたときに濁音になるもの。
「赤」と「組」が合わされたものは「あかくみ」ではなく「あかぐみ」と濁ります。
なお、上記の「生ごみ」は「こみ」が組み合わされた時に「ごみ」になったわけではなく、もともと「ごみ」ですので、連濁ではありません。
⑥ 外来語は鼻音化しない。
「シュガー(しゅがー)」
ただし外来語という意識がないほど日本語として定着している言葉は鼻濁音するものもある。たとえば「イギリス(いぎりす)」など。
この決まりに従うと「外国語大学」は「がいこくごだいがく」で、最初の「が」は普通の濁音、後の「ご」と「が」は鼻濁音になります。「外国語学校」の場合は「がいこくごがっこう」で、最初の「が」は普通の濁音、途中の「ご」は鼻濁音、後ろの「が」は普通の濁音になります。その他にもいろいろな決まりがありますが、例外もあり地域差もあるようです。鼻濁音が存在しない地域もあるので、学校教育では鼻濁音は教えないそうです。
専門家が、発音の違いを明記する必要がある場合などには、鼻濁音を表すために「かきくけこ」に半濁点(まる)を付けた「か゚き゚く゚け゚こ゚」という書き方をすることがあるそうです。パソコンのフォントとしても登録されています。
前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。鼻濁音は柔らかい感じの音なので、濁音だけで話すとキツイ感じになります。ですので、アナウンサーは正しい鼻濁音を話せるように訓練をするそうです。で、訓練して発音できるようになるのは良いことなのですが、本来は濁音を使うべきところに鼻濁音を使っているのを聞くと、違和感を感じます。例としては「学校」を「がっこう」と言ったり、「25歳」を「にじゅうごさい」と言ったりしているのを聞きます。特に語頭の鼻濁音はすごく違和感を感じます。「ガスコンロ」を「がすこんろ」と言っているのを聞いた時には、さすがに唖然としました。統計をとったわけではありませんが、NHKよりも民放の、しかも若いアナウンサーに多いような気がします。下記のNHK放送文化研究所の『鼻濁音の位置づけと現況』というレポートの中でも、鼻濁音の過剰な使い過ぎに言及しています。
逆に、鼻濁音にすべきところを濁音で話しているのを聞いてもあまり違和感を感じないのは、やはり時代に流されているのでしょうか?
主に以下の記事を参考にさせていただきました。